NPO法人岐阜ダルク

Drug Addiction Rehabilitation Center

山田興久  体験談

岐阜ダルクスタッフ山田興久体験談

前科3犯でも、新しい希望を手にできました。

手錠をかけられたことが3回あります。クスリを使っていたからです。こんなことをしているのはマズイことだと感じながらも、止めることができなかったからです。

「〇〇時〇〇分、確保。」とドラマのように刑事が言い、手錠がかけられました。両脇を刑事に挟まれてワゴン車に乗せられ、警察署に連れていかれました。留置場の鉄の扉はガチャッと冷たく厳しい音がしました。これからどれだけの間社会に戻れないのだろう。刑務所の毎日を想うと、気持ちはどん底に落ちていきました。クスリを使っていなければこんなことにはならなかった。クスリはやめられなかった。またこんなことになってしまった。どうしたら良いのだろう…

苦しい思いを手紙に書きました。岐阜ダルクに送りました。

クスリが出てきたら使ってしまうのは、薬物依存症と言う病気の症状だから仕方ないこと。

しかし、その病気を治す責任はある。ダルクのプログラムで回復できる。

そんな返事をもらい、何回かやり取りをした後に、施設長のかおりさんが面会に来てくれました。「私も昔はひどかったんだけど…」と笑いながら、ダルクのプログラムをやってみると良いよと言ってくれました。この人に効果のあったことなのだから、自分にも良いかもしれない。そう思うことができました。

面会室のアクリル板のこちら側の自分は、今から何年かの刑務所生活。アクリル板の向こう側のかおりさんは、笑いながら親しい人たちと自由に街を歩き美味しいものを食べに行く。

同じ薬中のはずなのにこんな違いがあるのは、ダルクのプログラムをやっているかいないかの違い。自分もダルクのプログラムをやれば、アクリル板の向こう側=自由な世界で暮らし続けることができるはず。そんな希望が生まれました。

依存症の私たちはクスリを使う。クスリを使うことそのものは表面に現れた症状で、コロナにかかった人が熱を出し咳をするのと同じこと。コロナの人が熱を出す原因はコロナウイルスだけど、私たちがクスリを使う原因は私たちの生き方そのもの。コロナにかかった人が熱を出さずにいるためにはコロナウイルスをやっつけることが必要だけど、私たちがクスリを使わずに居続けるためには生き方を変える必要がある。

 

生き方を変える。これがダルクプログラムが目指すことです。

以前は食事もろくに摂らなかった時が多かったですが、今はできるだけ栄養バランスの良い食事を自炊して食べています。

以前はテーブルの上もお酒のビンや缶が転がっていてゴミ箱からティッシュが溢れていましたが、今は仲間と一緒に2か所の掃除を毎朝しています。

健康的な生活習慣を身に付けます。

以前は運動することは嫌いでした。つながった頃、運動プログラムでは2㎞走れませんでした。ボランティアで参加したハーフマラソンの大会で、自分もランナーたちと同じように走ることを喜べていたらマクスリを使って刑務所に行くこともなかったかもと思いながら街頭整理をしていました。今は走るなかで喜びを感じられるようになりました。ハーフマラソンを何回も走り、フルマラソンも完走できて、自分自身感激しました。

以前はやったことがなかった陶芸、合唱、演劇、生け花。いろんなことにチャレンジした中でも、たくさんの喜びがありました。

午前中の施設でのミーティングと夜の自助グループのミーティング。毎日2回ミーティングに出て自分のことを話しします。

クスリを使って何をしていたか。クスリを手に入れるために何をしたか。

以前はクスリを使うのは刺激的で楽しいことだと感じていましたが、今は本当に醜いことでしかないと思うようになりました。

家族や友人。愛する人たちに何をしてきたか。

3人の子ども達の成長を感じることの心からの喜びを思い出しました。いろんなに人たちとの間に楽しい美しい思い出がありました。その人たちを裏切り続けた自分がいました。愛する人たちと、笑顔で穏やかな毎日を過ごしていきたいと強く願うようになりました。

今の毎日の行動も振り返ります。

ヒトの言うことに反発して声を荒げる自分がいました。周りの人たちとよい関係を築きたいと言う思いに反した行動でした。そんなことのないよう、自分が変わることを願い・祈り、意識的に行動しました。今はそんな反発心とおかしな行動が、少しは和らいできたように感じられます。

自分の本当の願いは何なのか?

クスリを使うことは、その願いにそったことなのか?

自分の本当の願いに向けて、今日一日 何をしてどのように過ごすのが良いか?

「自立」と「自律」 2つのジリツをしながら、与えられた今日一日を願いに向けて生きたいと思います。

岐阜ダルクにつながって10年になろうとしています。

つながるのが遅かった私は、あとしばらく経つと還暦です。

そんな年齢になった今は、クスリを使わずに、手錠をかけられオリに入れられることを全く心配せずに暮らしています。

今日、仲間が「タローさんは若いから」と言ってくれました。

ダルク・プログラムで心身の健康を取り戻したうえに、希望を持てたからだと思います。

ミーティングでこれまでの人生を振り返り、自分の人生はいくつかの段階に分けられるように思っています。3回手錠をかけられ、オリのなかで5年を過ごすことになりましたが、まだまだ次の段階に進んでいこう。それを良いものにできるはず。

今はダルクのプログラムで、自分の欠点を手離すことを心がけて過ごしているのです。クスリを使うことのないピュアなありのままの自分で、喜びをたくさん感じながら生きていける。そんな希望です。

岐阜ダルクにつながって新しい生き方を目指してきたら、新しい希望を手にすることができました。ダルクにつながり、続けてこれて良かった。