9月22日お弁当箱に詰まっているもの
「お弁当持った?」は
「いってらっしゃい」ではなく
母が僕を学校に送り出すときの言葉でした。
あの当時の僕には、
その大事なお弁当がすごく重荷でした。
乱雑に切られたアルミホイルの器の中には、
まっ茶色一色の煮物。
白いご飯の上には
暗い紫色のしそのふりかけに
茶色のゴマが大量でした。
男子校で
ただでさえ同性の男の子の中にいるだけで恥ずかしいのに、
みんなの中で
その汚い色のお弁当箱を開けることが出来ませんでした。
みんなのような
ギザギザのついたアルミホイルの器が
羨ましかった。
冷凍食品の
きれいな色合いの揚げ物が欲しかった。
ミニトマトが綺麗だった。
茶色ではない黒いゴマがよかった。
お腹を空かしたまま学校を出ると
僕は駅のトイレに行きました。
パチンコ屋に行かなければならなくて、
制服から私服に着替え、
お弁当箱の中身を
汚い和式トイレに捨てて流しました。
母をがっかりさせないように
巧妙に
アルミホイルを残すなどの小細工も覚えました。
パチンコで勝てば贅沢にファーストフードやコンビニで空腹を満たしたのでした。
不器用な母なりの健康を第一に考えた
自慢のお弁当だったのに… 。
今、僕はタッパー生活を卒業し
毎日お弁当を作っています。
まだまだ全て手作りの
本物のお弁当ではないけれど、
まずは形からでも
だんだん本物になっていくような気がして
続けています。
そして仲間に囲まれて隠さずに食べています。
お弁当は普段のおかず作りよりも難しく、
課題がたくさんあります。
今の僕のお弁当箱には、
本当にたくさんの思いや
僕のプログラムがぎっしり詰まっています。
僕のお弁当の残り物を
自分の昼ごはんにしていた
一生懸命な母を思い出す「今」です。